32歳の普通のOL。
お給料も普通、趣味も取柄も特になし。
たまに会って話す友人はいるけれど、本音で話したことは一度もないかもしれない。
もう30を過ぎているというのに、これからどう生きようかもよくわかっていない、中途半端な人生。
そんな私が、ある時好奇心で行ったホストクラブにハマりました。
好奇心で…とは言っても、どこか冷めてはいたんです。
「所詮はホストもお客も、お金があってこそ繋がることができる関係」。
全て偽りの世界だろうと。
だけど私は、初めて行ったホストクラブで、忘れかけていた感情を一気に思い出したのです。
指名した「和也(仮名)」は、私の愚痴をずっと同じ調子で聞いてくれました。
あまりに嫌な顔ひとつせず聞いてくれたものですから、私も調子にのって
「いいわね~ホストは、お酒飲んでこうして話すだけでお金が入るんだから」
と、嫌味ったらしい言葉までポロッと吐いてしまったのです。
それでも和也は、全く調子を崩しませんでした。
和也はとても整った顔立ちの所謂「イケメン」でしたが、その容姿の良さを鼻にかけることを全くしません。
それどころか、見た目は二枚目にもかかわらず中身は三枚目というキャラクターでした。
だから嫌味を言っても、それすら「まいったなぁ~!」なんて、笑い飛ばしてネタにしてくれたんです。
それでいて、愚痴のような真剣な?雰囲気の話は、固くなりすぎずほどよい調子で真面目に聞いてくれました。
ホストとして働いている彼にとっては、そんなこと朝飯前だったのかもしれません。
だけど何でも話せる空気感がとても心地良くて、そして和也の接客があまりに自然だったから…。
私は、彼から滲み出る人間性に、瞬時にハマってしまいました。
「きっと偽りだろう」と疑うことすら忘れ、「本音で話せるって何て楽しいんだろう」という、喜びの感情を思い出したのです。
それからというもの、私はホストクラブで和也に会うことが生き甲斐となりました。
オシャレにも気を配るようになり、「和也と会える」と思うだけで心がウキウキしたものです。
会社の人からも、「××さん、最近なんだか変わりましたね」「何かいいことあったとか?」と言われるようになったほど。
無趣味で何の取柄もなかった私の人生が、和也というホストと出会ったことでキラキラ輝きだしたのです。
また和也は私より6歳も下でしたが、お笑いキャラながらもとてもしっかりしていました。
見た目は明らかに私の方が年上ですが、話していて中身はきちんと大人だと感じることが多々ありましたね…。
交流が深まるにつれ、ホストの仕事についても、「親の借金を返し終えたらすっぱりやめる」と話してくれました。
「自分のではなくて、親の?」
「そうだよ。俺もさ~、いろいろ迷惑かけたしさあ(笑)まあ育ててくれた恩返しだよね!俺にはこれくらいしかできねーもん」
しがないOLの私には何もできることがない…と悔しくなりましたが、和也を出来る限り応援したいという気持ちがより強くなりました。
それで少し無理してお店に通っていたら、
「もう来なくていいよ。てか、来ないで。来たらダメ」
と言われてしまったんです。
拒絶された…と感じ、ひどく落胆しました。
だけどそれは
「無理させたくない(お金を使わせたくない)」
という、和也の思いやり。
それを知った時、私は心底和也のことが好きになりました。
そして
「俺たち、ちゃんと付き合えないかな?店じゃなくて、いつでもどこでも会えるように」
と…。
それから私たちは、お付き合いを始めました。
周りにはだいぶ反対されましたが…
結婚もできました。
和也は借金も返し終えたので、今はホストをやめて普通の会社員として働いています。
担当と付き合って結婚というケースは、少数派かもしれません。
だけど私は、和也と出会えて本当に運が良かったと思います。
生き甲斐になった存在が、共に生きるパートナーになれたことに、感謝しています。
(YOUさんの投稿)